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2007年12月03日 Category : 砥石

 天然砥石に関して最近特に思うのですが、産地によって石の素性の傾向は確かにございますが、それですべてが決まるわけではありません。

併せて、天然砥石に関して疑わしき産地名を謳うものも多いともよく聞く話です。

砥石が成っている鉱脈と坑道が、天然砥石の山の尾根や谷に対して・・・




  1. 平行




  2. 直交




  3. 上がり・下り




  4. 断層と露頭




等色々な環境が重なってきて天然砥石の素性も変わります。

1は山の土砂の圧力や気密環境が近似していると考えることが出来ますので同じ石が取れやすくなると予想できます。

尾根に対し南北300m以上伸びている中山の上から二本の桜と大幕の間府が良き例です。



2は尾根の真下に向かうというこですので、奥に向かうほど硬く締まった石が出てまいります。

大平が良き例です。奥のほうからは中山の黄板に似たものもあったり敷き巣板の強烈な硬さも楽しめます。



3は奥殿、白砥、中山泉間府(水間府)が良き例です。下って下ってカチカチの浅黄が出てきます。



4はたとえば本来なら浅黄であるところに、色々な色物が現れることがあって、簡単にいうなれば風が入るといわれるもので山にヒビが入って、水と空気に触れ 一般的に黒→浅黄→緑→黄色→赤 へと色づきながら軟質になっていきます。

ヒビがは入っちゃうということは、狩猟の際などのついでに砥石の発見も容易であり、鳴滝と菖蒲がもっとも古くから知られているのも納得できるかと思います。

煙硝は圧力のかかったところでよくよく気密性を保たれたところで現れ、大どれするところにしばしば現れます。コノドントと呼ばれる小さな生き物の化石が折り重なり天然砥石が出来たと聞きますので、蛋白の組成中の元素である窒素・燐・硫黄もそのまま残留しているため、面白い香りがします。裁断して水に触れるとその断面から塩が結晶となって析出したり深海魚を水揚げしたときのように内部から膨れ上がったりすることもあります。しかしこれは、土中に埋めて長年放置すると内圧や塩を開放できるのではないかと聞きますが、これは未確認。


 以上、天然砥石を知る上で、人と同じく生まれにこだわることはあまり懸命でないと私は、考えます。

天然砥石の産地自体への疑念も払拭は難しく、天然砥石も人間と同じくしてお山から砥石としてお迎えするまでに生まれ育った環境も非常に重要であるということは先に述べたとおりです。

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コメント

●砥石選び・・・買い手の本音
なかおか様

お世話になっております。
むじな男です。

>天然砥石を知る上で、人と同じく生まれにこだわることはあまり懸命でないと私は、考えます。

私もまったくその通りだと思います。

入門したての頃は、お山ごとに石の特徴がおおまかにグループ分けされていることが頼もしく思えたこともありましたが、売り手の口上と買い手の使用感にギャップが生じることもしばしばで、多くの同輩が人造砥石派に転向していきました。

浅草で創業100年という砥石屋の親父さん(平櫛田中とやりあった武勇伝を持つご高齢のツワモノです)も京都で砥匠と呼ばれる先生も、
「砥石を選ぶ時は、山名でも価格でもなく、研ぎ手・刃物・砥石の三者の相性を確めて選びなさい」
と、おっしゃっていました。

体験から言っても、やっぱりその石を実際に研いでみないと分らない事が多いように思います。

でも、これから天然砥石に興味を持つであろう若い世代の人たちのことを思うと、
「結局、研いでみなきゃ分らない」
という選別基準だけでは、いかにも心もとなく、(初心者の場合は特にですが)、財布をはたくのがデンジャラスと思われかねません。

天然砥石の将来をまじめに考えると、この若くて凝り性な人たちの興味を如何に引きつけるか?という問題は、とても重要です。

「砥石を自分で選ぶ時、ある程度信頼できる『鑑定基準』みたいなものが、活字になっていればなぁ」
と修行時代によく思いました。

環境や坑道鉱脈の走り方、開け方や面の付け方など、石は色々な影響を受けて「製品」になるようなので、《例外のない基準》を作るのはかなり難しいかもしれません。
刃付きのことまで言い出せば、研ぎ手の研ぎっぷりや刃・地金の種類、焼きの入れ戻し加減まで関係してくるわけですから・・・。

でもやっぱり、山名だけでは分らない石を、その特徴からまずまず評価できるような『一般的なガイドライン』が、待ち望まれているのは確かだと思います。
それを作るのは難しそうですが・・・・。

今日はこの辺で。
お疲れ様でした。
●管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
●悩
関東むじな男様
なかおかですおつかれさまです。

石を頑張って製品にさせていただいている立場のものの目線で一言で言うなら、「どの子もかわいい」ということです。
硬くて生地の細やかな石がもてはやされがちですが、中砥石や繋ぎの石にも人造に負けない特性があったり、嬉しい出会いもあるものです。
砥石を選ぶという観点の、もっと根っこにある、いつどこのタイミングで何故、砥石をつかおうと考えているのか?というところを自分自身のなかではっきり心置いておかないと如何なるガイドラインがあろうと功を奏さぬと考えます。
それで、研ぎというのはざっくり言うならば、細やかな砥石にたどり着くまでには、ざっくり付いた条痕を逐次適した砥石で細め、減らすということではないでしょうか?
本来大工さんのことわざであった「適材適所」。研ぎも同じ考えで、御執心の石がどのような素性であるのかよくよく知る必要が有って、なおかつ研ぎのどの段階で使う必要があるのか?これも知っておく必要ながるとおもいます。幸いなのか今日まで、研ぎの全場面をこなせる石は現れていません。
山本典男先生の伊予砥ものがたり中で紹介されておりました、中山と大村では32倍ほど砥粒の大きさに開きがあります。
中山で一日半かかる研ぎ下ろし量は大村では一時間を切るということです。
この間にどんな石を配置していくべきか?
それを考え、うまく配置できると研ぎの工程がとても捗り、仕上がったときに不用意な条痕を排除できると思います。
これが、やはり研ぎで一番大切なことではないかなと考えてます。
 私は、伊予もかわいいと思いますし、ブヨブヨ高島も大好きです。使いどころでは非常に研ぎの工程が簡略化できるとおもいます。
砥石はセットで初めてよく働いてくれるものだと考えてます。

とはいえ、環境や坑道鉱脈の走り方、開け方や面の付け方などで、砥石は大きく素性が変わりますので、悩みます。
やはり、最後はお試しが妥当だと考えてます。
よろしくお願いします。
なかおか
●よ~く考えてみれば・・・
なかおか様。こんにちは。
お世話になっております。むじな男です。

タイトルの“悩”に一字に込められた中岡さんのお気持ち、よくよく拝察させて頂きました。

『キズ減らしの段取りを考慮しながら適材適所で正しく使えば、どの石もそれぞれのシーンで能力を発揮して、かけがえのない役割りを果たす』
という趣旨のご意見、まったくその通りだと思います。
「砥石選び」に先立って、まず「研ぎの段取り」を組み立て、「適材適所」を見抜く眼を養うことが大切だということ、肝に銘じたいと思います。

買い手というのは(私自身を含めて)我儘なもので、思うような刃が付かないと、なにかと砥石や刃物のせいにしたがります。(・・・まぁ、事実、石と刃物がその人に合わない場合もありますが。。。「合わない」というそのことが見抜けないのも自己責任のうちだとはなかなか考えないようです)

私の木彫教室でも、上手く研げない原因を「自分の了見違いのせいだ」と考えて、研ぎの工夫に磨きを掛けるような奇特な人は、数えるほどしかいません。

ところが時々そういう奇特な方々から、
「砥石や刃物全般について、理解を深めるヒントになるような、手ごろな入門書・手引き書はありませんか?」
と聞かれることがあり、返事に窮する事があります。
「村松先生の『大工道具の歴史』かな・・・いや、この人、確かもう読んだと言ってたな。では、岩崎先生の本かな・・・いや、しかしこの人にとって"手ごろ”とは言えないだろう・・・」
などと内心煩悶したあげく、
「15~30倍の拡大鏡で、研ぎの各工程の刃付き具合を確認しながら、砥石と刃物と研ぎ加減の塩梅を、ご一緒にチェックしてみましょう」
と答えてお茶を濁します。

でも、よ~く考えてみると、手引き書を切望する熱心な人達には、fujibatoさんのHPやブログの関連箇所を読んでもらうのが一番わかり易いのだということに、今日初めて気がつきました。(我ながら気付くのが遅いと思いますが。)

私自身、中岡さんの書かれた文章から受けた恩恵には計り知れないものがあり、常々たいへん有り難く思っております。

これからも益々ブログ更新されて、やがてこのHPブログが日本の大工道具関連のバイブルとなることを(既になっているかもしれませんが)期待してやみません。


*伊予砥ものがたり、興味深く精読しております。就寝前に読んでいるので、数ページで寝入ってしまい、なかなか読了できず、トホホです。
**丸市さんや白砥など、このところ良さげな石が目白押しでまた触手がうずいて来ました。お金が貯まったらまたメールしますね。
●おくれてもうしわけありません
間等むじな男様
おつかれさまです。
同じくここ数日じたばたでした。
おっしゃる通り、今後は研ぎをちゃんと知ってもらうにも組の砥石を如何にとっつきやすい価格帯で組み立てて、提案させて頂くことが命題であると考えてます。
いわば愉しい研ぎ漬けになってしまう甘い罠というか抱き合わせ悪徳商法ですね。
 とはいえ、丸市様は中山専門ですので、結構中砥の次に中山に載せたりと、石の適材適所の件で辛い立場でもあるようです。それで私の繋ぎの石を喜んでいただけるということだと考えてます。
 礪、砥共に砥石は組となって徒党を組むことにより、よりそれぞれの価値やありがたみが引き立つものと思いますし、とぎの楽しみ方の懐も広~く深~く見えてくるものだと信じております。
私も、日々どないして説明したりどのような切り口で物を見ればよいのか??とっても悩んでます、どこがどうお役に立てるか分かりませんが、頑張ります。
ありがとうございます。
なかおか

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