はい~ ハイースのススメ
HSS=High speed steel=高速度鋼
鉋の場所の名前はhttp://www.tsune36.co.jp/shin.html参照ください。
常三郎さん,今年で60歳!
その半分にあたる30年前に日本初の裏だし不要
ハイスを作成され、今日に至るわけです。
まづ、耳障りが若干気持ち悪い?裏だし不要の持つすばらしい恩恵に関して。
結論から述べますと、どう~も本職用ではなさそうなこの見栄え、よくよく考え使いづづけたときにこれは素敵なことと気づくことでしょう。実は私も48mmを昔裏出し必要タイプでわざわざ作っていただいたのです。これは、今思えば蛇足かもしれません。
1.僅かなこごみ
←端
←真ん中
←端の端
←もう一発
脚の方向にさしがね当てて、脚方向のこごみを見てみますね!
真ん中も端っこも同じこごみ方で、極々僅かにこごんでいるのが確認できます。
この光景をよ~く記憶していただいて、、、
そこで、思い出してみてください。
裏だし必要の鉋のばやい、脚の真上では、完全な平面です。
同時に、両脚・刃先の三線が同一平面上であれ、ということになります。
ところがです、真ん中の画像のようにさしがね当てると、ボッコリへっこんでいるということがわかると思います。
それで、裏をたたき出して脚先を集中的に多く研ぎおろす必要がないようにかつ、脚が太くなって研ぎおろすべき面積が大きくなって、裏押しにかかる時間が逐次増長することも回避できるよう頑張る訳です。
ただ、大きくすいてしまっているものでは、限度があって、裏だしと脚の先下ろしとの歩み寄りになるかと思います。
これが多くの鉋の脚丈をちびらせてゆく中での現状です。
2.クイコミバンザイ
おおよそ脚丈五分ほど使うと、押さえ溝の・・・

左端中段に確認できるこの耳の食い込んだ部分!!!
おでこに甲を押さえつけられて出来る食い込みが甘くなって、隙間が出来るようになります。
こうなってしまいますと、削り代が大きなときや節や硬木などが相手ですと刃先が振動して暴れたり刃が出てきたりします。
原因は、唯ひとつ。裏だし量を凌駕する脚先集中押しによって、脚方向断面で展開したときのウエッジ(楔形)形状がより鋭角になってしまって押さえ溝のウエッジと異なってしまった。ということに他なりません。
台上ばでは、若干硬くなり刃口では甘くなるといったことが、多くの裏だし必要鉋で起こり、真ん中の裏鋤が深く、裏出ししにくい刃ほど顕著です。
これが出番の多い、へし鉋・対 節鉋・プレーナームラ取鉋では致命的かと思います。
この食い込みは、鉋台が台としての職務を全うしているか否か観察できる簡単な指針でもあると思います。
良く鉋の刃を保持しているのか?というわけですから。
台もGALの下着も食い込みが命!!食い込み万歳!!!
因みに、ちょっとした知恵で耳(脚の先)を僅かに両刃にします。そうするとデリケートな部分が肌荒れせずに済むわけです。ギッチリ食い込ませた良い台ほど食い込み、押さえ溝上ばが、削れて行きますのでお気をつけください。
何事も食い込む部分は痛くないようにです。
薄台で若干長い台が握りやすく好きなので、良く打ちました。中古のちびた鉋刃しかGetできなかったという理由もございますが、食い込みをきっちり効かせてあげると、薄くてもちゃんと働く台になると思います。
私は、鉋の肝心どころの八割を担う台の急所は、食い込みを作るだけの力あるおでこと押さえ溝にあると思います。
3.クラッシュハイト

刃を差し込むと、あらあら不思議!さしがねで見たこごみによる隙間がなくなりました。
これは、クラッシュハイト。樫のつぶれ代で全体に当たるようになってます。
特に力のかかるところは、台の上ばと下ばにあたる脚先と脚元であろうかと思います。
動こうとするものの両端を強く押さえ込む!
物を固定しようとするときの基本です。
樫はただ硬いだけではなく、粘り強さがあるので台に適すると思います。
もう一点、長時間力を掛けられていても、なかなか降伏変形して癖になりません。
隅があるものでケヤキの捻子組みがある建物など、時を経たものは桁バナが信じられないくらい垂れているのを目にするかと思います。同じ硬い広葉樹でも全く異なるものなのです。
硬さ・粘り・降伏しないことなど全て満足できる材は、そう多くはありません。
似た条件を求められるものは、込み栓や端栓などです。必ずといっていいほど樫が使われます。
4.トドメ 完全性・真実性・独自性
さしがねで見たこごみは、今は見えないわけですから、樫の台のおでこが刃を押さえつけ、押さえ溝上ばに見ることが出来るクラッシュハイトの範囲内であることが確認できます。
これは、中央部も同じRですので理想的な裏鋤!
どう裏押ししても、ウエッジはほぼ普遍で、押さえ溝と脚のウエッジは合致するということが約束されます。
更に、台の上ばと下ばで刃をいかなるときも強く押さえ込む形になります。
どうして?30年前までこの形がなかったのか?
ものの考え方と僅かなこごみを正確にすき上げる道具がなかったということだと思います。
30年前から常三郎さんはこの鋤上げを実現させ、今も常三郎さんしかこのすき方を見ることが出来ないかと思います。
道具の見栄えや、型に捉われるよりも、如何にして簡単に扱うことが出来て、台を長く生かすために着目してそれはそれはよくよく考えて、このような裏鋤を発案されたのだろうと思います。
鉋鍛冶である前に、よりよい道具を誂えるという物づくりの原点に立ち返った思いもよらぬ技法であり英断であったと思うのです。
「裏鋤不要」のもっさりした呼称や見栄えの内なるものにひしめく完全性・真実性・独自性におそるべしと感じていただけると思うのですがいかがなものでしょうか?
以上のことを考えますと、刃を見て身が余りに薄いものは、台に負けるので甘く仕込まねばならずです。裏すき深いものもPassしてます。
鍛造超薄鋼ハイスかんな
ここから先は、ハイス30年を機に更に恐ろしいハイ~ス鉋をという要望で、鋼を鍛造して極々薄く述べたハイスを作っていただきました。
複合材ならではの、スカット一直線な鍛接線にさようならです。
スーパー薄鋼!!!ムッチャ研ぎ易いです。捗ります。

ムラ取露払い用で60mmの身幅です。大鉋でも小鉋でもありません。大鉋寸六より5mm小さいのです。
短足で9分厚台で精一杯です。薄く軽くどちら様も握りやすくなっていると思います。
押さえも特注の短足押さえ。
ドラえもんもびっくり。約一寸二分脚
信じられないほどの永切れのハイス鉋は、激しく使うと欠けるよりも裏ダレを起こすほどの粘りをもちます。
この場合、刃先が砥石にかかりませんから、裏出しします。
鉋の中で一番出しやすい部類だと思います。自信がない方でもハイスだったら自信がつくと思います。
グラインダに掛けてもOKなのでRをつけた役物鉋に作り変える場合にも向きます。
加工性もこれに勝るものはありません。
鉋という道具を使ってみようという場合でも、普及価格で、最も使いやすく、維持管理しやすく、切れ味・永切れ文句なしのすばらしい鉋です挑戦してみてください。
よろしくお願いします。