古式復興薄鋼神技+ローモル鉄=shinharu印
昔の鑿のかたちを出来ることならもう一度作りたいと言う鍛冶屋さんと、裏出しやすく研ぎやすい鑿が無いか?という両方の要望が出会い実現したもの。
この砥石は中砥石です。シャプトン#1000です。
3寸鑿で砥石の上を一往復、行って帰ってきて、この砥ぎ汁です。
さすがにびっくりしていただけますよね?
何を意味するのか?
ぶっちゃけた話ションベンちびる思いです。
これはアルミか?と思うほどのもの。とにかく良く下ります。
実現する為には二点あることが必要であると思います。
- 硬い鋼が薄く付いていて、研ぎやすいこと。
- 地金がそもそも研ぎやすいこと。
いたって単純です。
「そんなん昔は、みんなそないして鋼付けよったけんども、今は大工さん裏押し過ぎてすぐ鋼をのうならせよっから、やりとうてもできんのじゃぁ~。のうならせといて、クレーム食らうからたまらんわい!」と言われちゃいました。
なんとも理不尽な話。それだけ刃物を扱う技術の伝承がうまくいかないと言うことではないでしょうか?
失われつつある扱う側の技術と言うものは裏だしが最も代表的ではないかとおもいます。
出す理由は・・
- 裏押し楽。僅かに出し気味で食いつき異常に上がります。
- 裏隙の形がいつまでも美しく脚も細いまま。 砥ぎ下ろす面積も小さいままで楽。
- 裏の作る平面と軸と柄の芯の位置関係を、いつまでも平行関係に近い状態で維持できる
- 古材や堅い材木によって両刃鑿にされても、砥ぎ下ろす事無くすぐさま復旧できる。
1.金盤に体重思いっきりかけて、汗だくで押すなんて嫌です。しんどいです。出したいところだけ先に出しておけば、誰が押しても3分仕事です。これはやりすぎですが剃刀イメージしてください。
2.脚や肩・カッコウに金盤がほとんどあたらないようになりますので、当然生まれたままの美しいうらの形が維持しやすくなると言うもの。
3.裏押さずに裏押ししますと、当然穂先から甲のほうへ減っていくので、裏の作る平面が、刃先に向けてどんどん起きて行く事になります。そうなりますと、柄に力が掛かる方向と、刃に掛けるべき力の方向にずれが出てきますので、叩いても効きませんし、変なところに向かって切れたり、柄の口金付近に負担がかかり、中子折ったり柄を折ったりします。駆け出し鑿ご覧ください。裏押しが出来てちゃんと、穂・軸・柄 三位一体の位置関係を狂わせることがない場合、それはそれは使いやすい鑿とすることが出来るわけです。ここは重要です。記憶していただいて損はないかと思います。
4.鑿の刃先は鉋と違い、節やアテに刺さると色々な方向から負荷が掛かりますし、一撃必殺の衝撃も加わります。気の毒な星の下に生まれたものです。古材などは砂を噛んでいる事が多く、言わば砥石を切っているようなものですから、裏も傷だらけになるわ、刃先は両刃になるわで、大変です。海の向こうの硬い木材も、石灰質やてつっぽものが入っているものがあり、似たことが起こります。
再び刃をつける場合、裏を出さずに生真面目に裏を押して傷を消すのはめんどくさいです。何度か繰り返すうちに、鋼もなくなるでしょう。頑張って表だけを押しても、両刃代をすべて下ろさねばならず、もったいないくてしんどいです。楽になる為には、裏を出してから裏を押す以外他なりません。
他にも薄いことによって受けられる恩恵はあるようです。→薄い鋼はどうなのよ?のところ参考ください
この鑿はシンハル印の鍛冶屋さんでありません。
鍛冶屋さんは、使う側一般の要望にあわせ、鋼は厚く、裏隙はモッッコリ深くとって、なかなか脚が太くならないようにして、格好を気にしますが、裏が出ませんので裏が切れたら押し続けるしかありません。
裏出しません→鋼厚します→裏思い切り鋤きます→ガッツで裏押し続けます→しんどいです。三位一体の関係が崩れます→勘も狂います。柄や中子が折れます。
つらいスパイラルです。。全鋼の刃物に近づいてきているのではとおもいます。欧米化でしょうか?
せっかくなので日本の付け鋼の刃物のおいしいところをかじりましょう。
ローモルとは磁石の母材のスタート地点の鉄で、純度を限りなく上げたものと聞きます。
シリコンウエハーの鉄版です。例の古い錬鉄とかから作られると聞きますが、私にはいつもより黒く見える鉄にしか見えません。
曇り系の石で研ぎますと、よくよく黒く面白い表情になります。やっぱり高価だそうで、持っている鍛冶屋さんも少ないのであまり聞かない素材かと思います。