お電話大好きな、米とイカの国の大工さんへ。
電話で説明しても埒が開かんので、これでどんなもんでしょう?
最低この三つは覚えておいて頂くと、早くて簡単で美しいお仕事が出来ると思います。
おおちゃくできる仕口の図です。
![beam & Hijiki joiner [桁の面腰仕口と肘木の相欠きの仕口]-1](http://farm4.static.flickr.com/3208/2966251869_3e709ae5b8_m.jpg)
まずこれ。
教科書道理。基本形とします。
下から6の成を、上木の追入で押し込んで、ラストは留めでひろう式。
材方向に1狂えば留めのすきは裏目で見えてくるので、√2=1.4!という恐怖のところが、拾ったところだけですので目立たんという式。
追入の押し込み方向の狂いは、追入深さの分ごまかせるという式なので考えなくて良いのです。
すきの要因は下木方向の狂いだけが反映されるので、この方向のみの、1のすきが1しか効いてきません。
押し切りとかで出来る留で一気に切り上げると、二方向分の狂いを加味せねばならず、同じ加工精度で仕事をしても、1のすきと、2.8のすきの差が出てくるということになります。
うん。シクチってステキ?
下木を目に付きにくい方向に持っていくようにするとOK!
これらの利点を利用して格子天井の仕口も切ることが出来ます。
眉付きでも、銀杏、瓢箪、さるぼ~でもなんでもOK!
複雑な形をした所定の竿の断面形状の反転型板を作成するだけで、完了!
![beam & Hijiki joiner [桁の面腰仕口と肘木の相欠きの仕口]-2](http://farm4.static.flickr.com/3288/2966251975_bd566cc767_m.jpg)
つぎこれ。留のところ拡大したものです。
上が出来たら、鑿で突くだけ!特に上木の加工も留が鑿一撃で楽々。
1が1.4に伸びる狂いは殺せます。
組む時にも留めが煮えこむことが絶対なくなる。
仕口の性質上、荷がかかると留がムチムチにムッチャ付く。
すいても、斜交いに三角に見える面が伸びるので下からのぞいてもすいて見えにくい。
廻り縁の留めにもタマニ使われる手です。
シタバとめのところが鋭角になりすぎんようにすくい上げたかさは任意に決めてね。
高さがないと、荷がかかると留が膨れて飛んだりします。
![beam & Hijiki joiner [桁の面腰仕口と肘木の相欠きの仕口]-3](http://farm4.static.flickr.com/3003/2966252143_172d476d48_m.jpg)
今度はコレ
下木のぱわ~を最大限に温存したい場合。
肘木の組み手に良く使いました!
奈良では邪道とされる手。
針葉樹は背を欠き広葉樹は腹を欠くと尚やさしいと思います。
確かに刻みには時間を要しますが、逃げを効かした仕事が基本形ですので、刻みも要点だけちゃんとしてあげてあとはやっつけ仕事でOKなんで、結果的に速度は余り変わりません。
実際組む時には、このほうが2倍以上高速作業でき、丁稚でも組めます。
肘木の場合、すかないようにきつい組み手で下木がダレまくって、結果、コーチボルトで桁の成を貫通させて引っ張る!といった、なきそうな事態を避けやすい仕口。
肘木近辺の桁には仕口がきってあることが多いので、如何に貫通穴を開けることが有害であるか想像できるはず。桁のカマクビとかドッコ首に貫通穴とか絶対NG.仕口ポッキリ折れてしまいします。
- 目地の入りは浅くして相棒を気遣い、巾を広くして見つけ面を硬めにしても飛ばないようにします。
材が3寸巾なら一分入りでもOK。 - 目地と目地の間は上木巾より多めに取って逃げる仕事。
この二つで、上木が下木の4の成のところで突っ張って押し広げる力を全くもって無に出来ます。 - 6の成では上木で思いっきり締め上げていただいてOK
構造的に最もすきにくく、下木に強度を捧げる事の出来る仕口。
しかし、残念ながら、下端に面腰をつけたいときには使えんのです。
以上、昼めし食った後に一回ずつ模型を作ると合点いくと思います。
各シクチにそれぞれ用途に応じた良さがあると思います。
イロイロ砥石やスゴイ道具をいぢるのも楽しいですが、シクチに要する材の持ち出しが要する材積=ご予算と、どのような場合にどのように適用させて、頑張って育ってきた材をよりよく、より永く活かすのか悩むのもまた秋の夜長にぴったりなお楽しみでもあります。
このお悩み事こそ職人の内なる財産を伸ばす良き糧で、道具のように金銭対価では手に入らないもの。
悩むのに時は要せども銭は要らぬです。深く悩むべし?