ぽくたちと同じく、天然砥石の目は両目あります。時として、目は口ほどにものを言うもの
大突の大判を鏨一撃で開けたものの表面よく見てみましょう。
砥石の長手の方向でポッキリ中折れする砥石というものの多くは、『布にある目の方向』に直交している可能性が高いかと思います。
下記の画像のように試しに、おもいっきり叩くと、概ね目の方向に沿って割れます。
これを確かめたいがためだけに、やってしまいました。知ろうとする行為は築財にも勝ると信じ頑張りました。
中山から菖蒲まで高雄の石は、特に確認が困難な薄い皮けつから皮けつまでの間隔がせまめで、ここを鏨で突けばきれいに平面に開きます。
そのとき出来た面、いわば布手には目の方向が刻み込まれてます。
三枚目の画像は、わかりやすいように半分まで面付けしたものです。こうしてあげると一目瞭然です。
砥石の目というのは、一般的というかほぼ独占的に断面に見られる砥石として成長してきた跡を示す目を指しますが、それを道しるべとして先ず、砥石を開ける場所を探します。
これに併せて、布の目も知らねばなりません。
当然目の方向に滑りやすく、強度もありますので開けやすいのです。
この二つの目を両目として原石をよく観察して、開ける場所と鏨打ちの方向を決めなくてはなりません。
中折れしにくく原石の持つ砥石としてもてる力を最大限まで引き出すためには目で開けて、布の目で裁断してあげる必要があると思います。簡単に言えば、板材の製材を思ってください。
良い原石ほど、目がはっきりしています。
布の目の結合力が特に弱い傾向にある産地のものもあり、裁断時に中折れするほどで堪りません。
目の言うことを聞けば、とても歩留まりが悪くなりますが、職人の目そのものとして、中世の世より開祖が伝えてきたことであり、これはとても尊いことだと思います。
確かな誂えの石を確認するためには、知って置いて損はなかろうかと思います。