背と腹 例
とのことですが、例えば桁組について。
一般的に教科書では背を建物の内に組みます。
化粧桁ならなおさら腹を見せないつらいです。
しかし、土居桁が載ってハネギてこになる場合、背が外を向く使い方があります。
土居桁にかかる屋根材のとても重い荷重が内に押すので、それに抗う力を持たせるよう組むという話。
見栄えがきちゃなくなっても、この利点が大きいという考え方です。
狂いに逆らわず有利に使う考え方の良い例は、"女房を貸しても砥石は貸すな”という諺もこれ。
砥石は使うと狂います。
面が狂います。
中砥以下が特に狂います。
実務では刃先を完璧にまっすぐに研ぐことは余りありません。
材の真ん中がへこんでくるからです。
このへこみRに合うような狂いをきたす砥減らし方を考えて、横とぎ斜めとぎ直角とぎとあらゆる研ぎ方を使って研いで好みの狂いにもっていきます。
各研ぎ方での狂いの指向性や、狂いを固定する研ぎ方について書くと大変なんで、お試しください。
例えば75*205mmのいしのどこがどんだけ凹んでいるか、研いだひとだけが記憶してあり、次はどこをどのように重点的に減らせるかわかっているということになります。
狂うことは仕方がない。ではこれを利用して制するような研ぎ方を考えており、砥石のいわばミクロの狂い地図が人に貸してしまうと変わってしまって台無しになってしまうということをいっとぃるとおもいます。
仕上げ砥石は高価で、道具の花形であり崇拝の対象であるので貸さないというのではなくて、中砥以下を貸すと狂い地図が台無しになって、再び地図を作って覚えるのに多くの手間を取るということになるので、仕事に支障をきたすと解釈します。
これでは女房にお納めする銭も上がったりで恐ろしいことになります。
それで、仕上は、貸してもまぁ何とかなるのですが、中砥はこういう理由でダメデス。
良い子の見習い君が親切心からか、丁寧にも狂った砥石を直してくれたことがあり、参ったしたことがあります。
ひたすら研ぎものを練習させられる理由として狂いにあまり抗おうとせず、仲良く付き合い、願わくば利用して制す考え方も植わってくることも考えられます。この延長に木の狂いへの考え方もあると思います。
もちろん手や勘もかたまります。
親方には、中砥石が減る速さでどんな考え方でがんばっているのか一発で見抜かれているのかもしれません。
中砥は二丁以上もって、狂いに付き合って使うと思いの外長持ちします。
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