白鷹先生の切れる”形”の包丁・山涌包丁も切れますよ
土佐派の黒打ち!五寸五分三徳包丁。
ここで注目していただきたいことは、伊予砥で仕上げたなりの地と刃です。
条痕が良く目立ち、キング1000番より荒っぽい肌に見えます。
勿論、仕上げ砥石による刃引きも行っておらず、伊予砥で終了!!!
刃先の歪み取りサボって偏りが出たので没。「あんたにやるわ~」といただいてきましたが研磨で修正出来そうです。厳しいです。
包丁の仕上げ砥石に関して、最近では硬いものや生地の細かいものを探そうと躍起のようですが、真髄は白鷹先生が知っていると思いました。
道具は使うことにより結果として分け隔て、偽りなく明確に現れます。私は、その結果を五感を持って感じ、思いにふけるものです。
荒と中砥に属するガサガサ伊予砥仕上げで切れるものか?とお考えがちですが、結果が証明してくれます。
月曜朝刊20枚の物を二つ折りにして実際40枚物を丸め切り込みます。
ご覧下さい。トリックではありません。
これが村の一野鍛冶に端を発し、西岡棟梁が背中を突いたことで鉄へ生涯を賭して行く決心を得た先生が、月並みの生活の中で村の人の為にと誂えていた作品。多くの代価を支払い続けた職人様の手から生まれ出でるものは、やはりただものではございません。
お話しする中、熱処理や鍛造に関して、昔ながらではあるけどしかし、手抜き妥協は一切なくすごい物だと思っていましたがそれだけではなく、遥か北の方にいらっしゃる刃物と鉄に魅せられた白鷹ファンである先生が、「切れる形を知り尽くした鍛冶で、日本ではおそらく最後でしょう。だから包丁は一番切れる!」とのこと。
初めは何をおっしゃっているのやら全く分かりませんでしたが、おそらくは姿をはじめ、重心配分や断面のウエッジ形状の妙技というか均衡性といった感じのものを知り尽くし、それを我が槌を振るう鍛造という表現方法一本で成し遂げてしまうということなのでしょうか??
私は、「極軟に青二号を沸かして割り込ませた物と白鷹先生に聞いたのですが、異常に切れますよ??更に伊予砥だけ仕上げで刃引きなしって、不思議でなりません」と思ったままの感想を述べさせていただきました。どうやら、鋼種・鋼材に固執するのではなくて、”形”を知っている鍛冶屋がはたけば切れるということでしょうか?
たとえば鋼材各種の特性に頼る、物に対する知識で刃物を生み出すのではなく、もっと物づくりの根っこにある職人さんの内なるものに住まう、知恵とか手先に残る勘や経験を積み体に染み付いたものが、切れる”形”を生み育むことが出来るのではないでしょうか?
正直、お仕事で鑿鋸鉋色々使わせていただき沢山感動させていただきましたが、この歳になって包丁の切れ味で、一番チビルほど驚かされるとは夢にも思いませんでした。
包丁は有り触れ過ぎた量産の道具だ、と思っていた自分が恥ずかしい想いです。
例の材料は私の手元に置いたままなので、次回伊予に帰った時に先生にお渡してOKなら、面白くなりそうですね。
気長にお待ちください。
あり得ません!でも40枚物丸めたもの切ってます。
チラシ切りもサクサク!
ところで・・・
山涌さんのV金2号の土佐風菜切りでも、ムチャクチャ切れますが先生の場合と比較するには気の毒です。
地金も美しく曇り、刃引きも特に非常にこまやかな生地のもので仕上げています。
元鋼材を約半分まで延ばしているようなので、かなり気合入ってます。
たまげてください。 よろしくお願いします。
コメント
包丁の試し切り、たいへん興味深く拝見しました。
何事も奥が深いですね・・・
江戸後期に発行された「日本山海名産図会」には包丁と砥石について、次のように記されています。(現代語に訳しました。)
「包丁は台口中砥、平尾砥、杣田砥(そまた)等で研ぎ、仕上げ砥は使わない。また、薄刃包丁、菜切り包丁などは荒研ぎは台口砥、白馬砥、青神子砥、茶神子砥、白伊予砥を使い、上引をして色付をする。」
全文訳はこちらです。
http://www.eonet.ne.jp/~kiyond/toisi-nakato.html
Posted by Kiyond at 2007.09.01 09:58 | edit