おやまのなかでの電撃的出会いその弐
遅くなりましたが続きということで。
前置きは、コメント欄読んで頂いた事として、書き書きいたします。
砥取屋土橋さんとお話させていただいて一番思うところは、採掘する者としておそらく日本で最後になるであろう世代を担う物としての使命感に心燃やしていらっしゃる事。
天然砥石を使う方々へに対する門戸の間口を如何にして、今後拡大し続ける事ができるか?
よくよく思慮なさっていらっしゃると感じました。
そこで、一つ我々にとって出来ることとして、思い立つ事があります。
研ぎの奥の深さとか、人を選ばすきっと伝える事が出来るような、刃を付け切れるようにする楽しさをどうやって知っていただくか?
人々が、天然砥石を使ってみようという想いを支え育む為に、「何でも研ごう会」なるものをやってみようというお話に、私はとても面白く魅力的だと思いました。
読んで字の如く、競技でなく誰でも気軽に、とにかく何でも研ぐということが目的で、遊び心で望むもよし、精神統一させ心磨く為の良き媒体としてもよし、研ぎ比べて刃物の表情を楽しむもよし、となんでもありです。
私は、やり鉋とぎの実演でもやろうかというお話やら諸々で、大いに盛り上がりました。
伊予砥をはたいたあとで、埃っぽく小汚い私を、何のためらいなくお宅に上げていただき、色々と熱い想いを打ち明けていただき、誠に感謝感謝致します。ありがとうございました。
東の硬い石が最上であるというのが一般ですが、たまたま鳴滝や菖蒲に露頭した砥石が多く、発見されやすかった環境があったから、確固たる歴史と伝統が形づくられたのかもしれません。
例えば、研磨力の乏しい砥石として魅力が少ない合い石と本石の中間的性質の中石で本石のように層状になり板状粘板岩ではなくお芋型の原石が産するとしてよく知られる、大内は間府が沢山開いており、低い所からは見事な本石の特級品が産する事もまた事実。
鉱脈の巾も東の比にならないほど広く、各層厚く整然たる層を以って成っております。
とんでもない生地のそろい方・層の整然さや、板状にきちっと成り最も本石らしく、本石中の本石の名を冠するに相応しいものだとおもいます。
生まれや層に拘らず石の力と生地の整然さに注目していただけるのであれば、これ以上の素晴らしい石はないと思います。
巣板は巣なしが多く、良く積んでおりタマリマセン。他も整然と厚く成り素晴らしいです。鏨も一撃必殺で掛かりそうで、作る側からみても魅力的です。
研いで良い石は、作りやすい石ということもまたいえることだと思います。
大内は、お芋型原石でかつては船のバラストウエイトとしたり、昆布砥としたりでよい印象は持っておりませんでしたが、原石を見るだけで、馬鹿な先入観ほど恥ずかしい物は無いもんだと思い知らされました。
間府がおおく開いており、大当たりもあるんだよっということです。
製品を見ても、皮ケツさえ捲くって鍛えれば、東の特級品と容姿が見分けつかない物が余りも多くてこれもまたチビリマシタ。はっきり言って研いで見ても分からない物が多く、今まで産地ごとに分けて石を紹介する事の無意味さをひしひしと感じてしまいました。
人も石もおなじくして、本当に力のある石が評価される時代が来ることを望みます。
産地に踊らされる風潮により、明らかに無茶な判子突きを横行させた環境をこれにより淘汰できるとも思います。
この日の出来事は、石の生まれに対する偏見を戒め、どのような石が本当に価値があり求められる物なのか??????
私にとって、大いなる悩みを与えるきっかけとなりました。
電撃的出会い。その真意は、お山の中で見られたくないところを見つかっちゃったという事などではなく、この悩むべき事が出来てしまった機会を与えてくださった事他なりません。たぶん・・・
読んでくださった皆様は、石のどこに価値があるとお考えでしょうか?
伝統と生まれ?素性?大きさ?いろいろ?ぜんぶ?第六感?
気になります、よろしくお願いします。
コメント
こんばんは中岡様!
ブログ更新有難うございます!!
私にとっての砥石の魅力とは、セラミックのようにピカピカに光るが刃先が欠けやすくなるのではなく、 ピカピカ感に誤魔化されずに 怪しくぼやっと光り 刃先が強くなる効果です。
それと香りです 自分の天然砥石は いい匂いがして 食べたくなります♪
自分は刃物を現場では研ぎません、 好みの加治屋の鉋や鑿をかなり沢山持っているので 今日は この加治屋さんの鉋にしよう などと仕事をし 毎週日曜日に まとめ研ぎし この加治屋さんの鉋はこの砥石に合うなぁなどと楽しんでます!!鑿でも加治屋が違うと 刃や地金が同じ成分なのに 裏出しが楽な物 なかなか出ない物など違いがあり 深いなぁ~と感じます!
ヨロシクあれ! 中西健一
Posted by KEN at 2007.09.22 19:34 | edit
いつも尊敬の念を抱きながら(本当ですよ)読ませてもらってます。
以前、人造砥ばかり使っていた僕はスイタという言葉を初めて聞いたとき、「スイタって吹田で採れるから?」というぐらいの無知でした。
初めて天然砥石を買ったのは砥取屋さんの戸前です。何も知らない僕に、わざわざ電話まで頂き、いろいろとアドバイス下さいました。
次に富士鳩さんのHPに出会いました。そしてそこで、いろいろな砥石山のことを知りました。ヤフオクで立石さんより、馬路山の小さいやつと新田巣板を購入しました。
いずれの石も気に入って使っています。
砥石は興味のない人からすれば、ただの石ころです。嫁はんにも 「また石ころばっかり見て!」 とよく叱られます。
しかし僕には宝石です。宝石の魅力、価値はすべてです。
これからもがんばってください。ブログ、HPの更新楽しみにしています。
Posted by 口熊野の大工 at 2007.09.23 00:53 | edit
中岡様、いつもお世話になっています。
『砥石のどこに価値を認めるか』というのは、難しい問題ですね。
木彫が本業の私の場合、HGALのAとLで能力評価をし、HとGで性格評価をしている感じです。
AL値の高い石は、仕事現場で素早く正確に良い刃をつけることが出来、何かと頼れる存在です。
HG値については、数値の高い石が常にGoodとは限らないです。工程内容・木地の性質・石と刃物の相性などにより、その場その場でBestなHG値の石を相関的に絞り込んで使うことになります。
山名は、東・梅ヶ畑・馬路系・・・などのおおまかなエリアをチェックする程度で、あまり気にしていません。
エリアによって石の特徴が異なるのは事実だと思いますが、マルカの戸前だから、奥殿の巣板だから、丸尾山の大上だからと言う、ただそれだけで必ず調子の良い石であるとは限らないです。やっぱり試し研ぎをしてみて、研ぎ手や刃物との相性の良し悪しをチェックしてみないと、本当のところは分らないと思います。(ちなみに、試し研ぎをする時は、私が石を評価するというより、石に私の研ぎを評価されている感じがします。私の研ぎっぷりに対して『気に入った』と答えてくれる石が現れるまで、お見合いを繰り返すような印象です。)
素性を気にすることは滅多にありませんが、ウン十万円するような高価な石を購入するような時は、どの山のどの間府のどの層で誰が何時頃採取した石か、ちょっと気になるところです。
あとは、用途に見合ったサイズ、地を引くか否か、名倉との相性、坐りの良さ、表面筋や層割れの有無、皮・畳・ゴザの様子、養生跡の状態などで評価しますが、最終的に気になるのはやはり『風格』でしょうか。
これは、コッパより8型、4型より3型のほうが上等・・・と言う意味ではなく、コッパでも、原石でも、薄板でも、妙に品格を感じる凛とした美しい石ってありますよね。石にも『石格』みたいなものがあるのだと思います。『愛用に堪える石』としての風貌とでもいいましょうか・・・個人的な好みだと言ってしまえばそれまでのことですが・・・。
この間お世話頂いた菖蒲などは、私にとっては『石格』のかたまりみたいな石で、毎朝、仕事始めに手を合わせて拝んでいます。石と向き合うだけで、怠け者の私が「今日も1日、精一杯仕事をしよう」と言う気持ちになってしまうのですから、『石格』恐るべし!!!です。
要約すると、①実用面ではAL値の高い石(HG値については異なる数値の石を何丁か使い分ける)。②趣味的には、自分好みの『石格』を感じる石。。。この2つの条件を満たした石が、私にとって『価値ある石』ということになりそうです。(なんだか月並みな結論になってしまいスミマセン)。
砥取り屋さんと親交を深められたこと、(私的にはかなり意外でしたが)、砥石業界にとって非常に喜ばしくめでたい事だと思います。
これからも日本の天然砥石業界のために、ますますご活躍ください。
ps.非競技形式の『なんでも研ごう会』、すごく良いアイデアだと思いました。陰ながら応援してます。
Posted by 関東むじな男 at 2007.09.23 17:23 | edit
関東むじな男?さま
遅れまして申し訳ありません。
例の菖蒲はステキですね。ところが土橋さんのところから皮ケツ以外で、菖蒲の色物と全く見分け付かない物が出ており、刃を当ててみても正直分かりません。
これもまたショッキングな出来事で、生まれに拘ることがますます無意味に思えてます。
とはいうものの、いつごろどの間府で誰が頑張って何億年と寝続けたお山の中から、砥石をお迎えした物であるのか?気になるのもまた当然です。
私も砥石を気合一発で買おうかと思うときに来歴証書なるものが欲しいと思います。それもまた人情として皆が少なからず持っているものだと思います。
石格と表現されるように、原石に鏨掛けるときに勘に突き刺さるようなステキな物も稀に有ります。そういう物は作っているときが一番楽しいですね。
まだまだ悩み続けると思います。
よろしくお願いします。
Posted by なかおか at 2007.09.25 23:26 | edit
口熊野の大工様
遅れまして申し訳ありません。
恐れ多い貴重な御意見ありがとうございます。
吹田なら家からとても近いので、石が出たら嬉しいのですが・・・たけのこしか出ません。
コメントにリンクかけていただいていらっしゃるようですが、エラーで見れません。URL御確認いただけると幸いです。
石の価値観は人により大きくばらつきが有り、ビンゴな石を御案内させていただくことの難しさにも悩みます。
同時に、いかにして興味のない方々に砥石の面白さと魅力をお伝えすべきかという事にも悩みます。
ボツボツ頑張ります。
よろしくお願いします
Posted by なかおか at 2007.09.26 01:01 | edit
中西様
いつもありがとうございます。
なかおかです。
食べたいとお聞きするのは初めてで衝撃です。匂いはどんな匂いなのでしょうか?
ところで各山の敷き巣板や大どれするところの巣板には、煙硝(しゅんしゅん)がとれ、硫黄分と何かしらの塩気が大量に含まれております。
大昔の酸素が大気に余りなく、硫化水素とか亜硫酸ガスが大気にあった頃これらを代謝の媒体として体内に取り入れていた微生物の死体で出来たものと聞きます。
硫黄分と塩気が非常に多く、後の世に出来上がってきた砥石層によって押し縮められ圧力も強烈に掛かりカチカチが多いです。研ぎの時の匂いは温泉地の臭さでタマリマセン。
黒い蓮華の模様とか良く見られます。
塩気も強烈に入り込んでおり、原石から製品にしたとたん、水に接触するたび塩気が側面からどんどん出てきて結晶ができます。
これはなめてみた事があります。
塩味がします。
という事で、石の力はあるのですが刃物が良く錆びます。
お山の中で圧がかかりすぎているところから製品になることで一気に開放されますので、中から膨らんで割れることもしばしばあり、多少博打です。ちょうど腐った電池のようにモコモコなってしまいます。
これらを回避する為の打開策として、色々ございますが、又の機会にでも。
妙に光る砥石とカチカチがもてはやされる面白い時代ですが、永切れとか仕事で最も使える砥石はおっしゃるような石であると真に思います。
裏だしは地金でもかなり変わってくると思います。例の燕はとっても出しやすくネバネバしていると思いますので、そのあたりもお楽しみください。
よろしくお願いします
なかおか
Posted by なかおか at 2007.09.26 01:52 | edit
あまりパソコン詳しくないんで申し訳ないです。
一応間違ってはないと思うんですが、僕もクリックしてみましたが、エラーでした。
直接URL入れてもらえれば、いけると思うんですけど、わざわざ見ていただくほどの物でもなかったので恐縮です。
僕が天然砥石に興味を持ったのは、いかに永切れさせるか?ということからです。
一日中鉋を使うにあたって、できれば半日、最低でも一服まで切れ味を持続させたかったのです。
檜なんかはいいのですが、杉の白太となるとそうはいきません。
それからは僕も試行錯誤しました。
一つお聞きしたいのですが、鋼の種類は抜きにして、研ぎや砥石で、なかおかさんなりの永切れさせる秘訣ありましたら伝授していただきたいのですが・・・
御返答いただけるとうれしいです。
よろしくお願いします。
Posted by 口熊野の大工 at 2007.09.26 22:26 | edit
口熊野の大工様
お疲れ様です。
なかおかです。
今度はこのブログリンクのような??
私も、儲かる職人について何時も考えておりましたので、永切れ命でした。
及ばずながら意外なところで、一つとても重要な事があると思います。
とぎの方向だと思います。
ストロークに対して刃を直角か?平行(横研ぎ)か?だと思います。
砥石の粒粒の巾が1cmだとしたら刃先の条痕の巾は当然1cmになるはずです。このとき直角に刃を当てているということです。
では。45度の時は、当然裏(差し金の裏目)になります!
つまり、約1.4cmの条痕巾になります。
60度では、三平方の定理 1:2:ルート3に則り2cm。
横研ぎではとても大きくなりそうです。
条痕高さはいかなる角度で当てても普遍ですが、巾は大きく変わります。大工さん的に言うなら棟高普遍で隅木や触れ隅の隅木長さに対する地の間(殳)の取り方と全く同じです。
このところを考えますと、砥石に対して直角に刃を当てたくなると思います。
あとはチップソーの目立てを観察すればピンと来るように、木工はとがった掬いで、金工・鉄工チップソーは切削面に対し直角に近くなり、台金により多くの応力を受け流し、耐久力を持たせているよう、確認できます。
これは、のぼりさんの釘でも挽けちゃう鋸の目立てにも見ることの出来る方法です。
当然その縮図である、鉋の刃研ぎでも同じことが言えるのではないでしょうか?
斜めに研げば、条痕も斜めに抜けますので、刃先が極とがった形状になり、掛かりはよさげでも、忍耐しそうではないということは考える事が出来ると思います。ちょうど木工用チップソーっぽいかんじでしょうか?
そういった、月並みな想いで直角に研ぐように心がけております。
見習いボーイの頃いぢわるなおやぢ職人さんに、斜め禁止と言われ、何故だか理由が知りたいし、角度決めにくいわでモヤモヤしていたのですが、こういった理由をムリヤリ思いつきそれを元に頑張った記憶があります。
あとは当然裏ですよね?杉はちっとでも裏がだれてしまうとサッパリのような気がします。
硬い木をそれなりの厚さでゴリゴリ減らせるような仕事とか、焦って走って掛けたりした後に杉に挑むと良くだれている事に気づくアレデス。
常さんの良いカナバンがやはり砥石なんぞより、命だと思います。
実際お考えの程、御報告いただけますと幸いです。
ちなみに私は、熱処理が巧くいった青一Bで何でも削ってます。勾配はお手手で74とか76程度で植えたものです。
二枚でも、随分軽くなってばて方が変わってきます。
自動出てきたてのフン反り返ってないものを触れるのであれば、一枚がとても軽くて楽々です。
永切れが実現してくると、体力長続きもまた肝要になってきたりするのでは?とも思います。
よろしくお願いします。
なかおか
Posted by なかおか at 2007.09.26 23:36 | edit
早速の御返答ありがとうございます。
正直僕は今まで、経験や感覚に頼っていたところが大きく、大変参考になります。
研ぎの方向性などは、ナルホド と思います。
見習いの頃に教えられたことを何の疑いもなく、あまり考えずに今まで来ましたが、なかおかさんのお話を聞いていると、一つ一つの動作には、それぞれ深い意味があることを、深く考えさせられます。
まだまだ勉強不足です。
研ぎも一生です。
これからもいろいろと御教授頂けたらと思います。
ありがとうございました。
Posted by 口熊野の大工 at 2007.09.27 01:17 | edit